ヴァイロコントロール因子として有望なRnMBV1の構造が明らかとなりました。

[著者] Miyazaki, N., Salaipeth, L., Kanematsu, S., Iwasaki, K., and Suzuki, N.

[論文タイトル] Megabirnavirus structure reveals a 120-subunit capsid formed by asymmetric dimers with distinctive large protrusions.

[掲載論文] Journal of General Virology 96: 2435-2441 (2015). doi: 10.1099/vir.0.000182.

[使用した共通機器] 超遠心機、DNAシークエンサー

[内容紹介]
白紋羽病菌、Rosellinia necatrix は土壌生息性の植物病原子のう菌です。本菌は宿主範囲が極めて広く、日本の果樹をはじめとする多年生作物の根に感染し、甚大な被害をもたらします。他の土壌病害と同様にその防除は非常に困難で、農薬を用いた防除は可能であるものの膨大な費用と労力を要し、環境への影響も懸念されます。一方で、生物防除の一種であるヴァイロコントロール(ウイルスを用いた糸状菌病の生物防除)を目指したウイルス探索が1990年代後半から進められました。その結果、その中に本菌の病原力を低下させるウイルスが存在することが明らかとなりました。特に、2本の2本鎖RNAをゲノムにもつRosellinia necatrix megabirnavirus 1 (RnMBV1)は有望なヴァイロコントロール因子として注目を集めています。筆者らの研究により、RnMBV1のゲノムは2本の線状2本鎖RNA(dsRNA1 & dsRNA2)からなり、それぞれにORFが2つ座乗していることが示されました。dsRNA1のORF1, ORF2はキャプシド蛋白質(CP)とRNA依存RNA合成酵素(RdRp)をコードします。CPとRdRpはゲノム長のmRNAから翻訳されますが、RdRpはリボゾームの-1フレームシフトによりCPの融合蛋白質として少量発現されます。
この研究では、クライオ電子顕微鏡観察/3D再構成によりRnMBV1粒子の構造解析を行いました。粒子を感染白紋羽病菌から塩化セシウム平衡密度勾配遠心により、精製し、供試しました。その結果、15.7 Åの解像度で再構成粒子像が得られました。読者の中にも、宇宙船のような形態をとる細菌ウイルスをみて感動された方もいるかと思います。RnMBV1粒子も芸術的で、美しい姿をしていました。直径が52の球形粒子で、キャプシド(殻)は非対象のCPダイマー60(合計120分子)から構成されていました。粒子中には、ゲノムセグメント1つとRdRp分子数個存在すると推察されます。この構造は、他の2本鎖RNAウイルスと共通でした。大きなそして興味深い相違点は、RnMBV1粒子は幅~45 Å、高さ ~50 Åのより大きな突起を120個粒子表面にもつことでした。2本鎖RNA粒子は通常、RNA合成に必要な酵素(RdRp, RNAヘリカーゼ、キャッピング酵素)を含んでいます。複製機構が詳細に解析されているトティウイルスでは、宿主mRNAのキャップ構造を盗み取る(キャップスナッチング)に関わる領域が粒子表面に存在します。RnMBV1の大きな突起がどのような機能を持っているかは不明です。今後の研究に期待するところです。
尚、本研究は生理研・宮崎博士、果樹研・兼松博士との共同研究として進められました。

(文 責:鈴木信弘)

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