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イネの亜鉛の優先的分配に関与する輸送体OsZIP3の同定

[著者] Sasaki, A., Yamaji, N., Mitani-Ueno, N., Kashino, M. and Ma, J. F.

[タイトル] A node-localized transporter OsZIP3 is responsible for the preferential distribution of Zn to developing tissues in rice.

[掲載誌] Plant Journal 84:374-384 (2015)

[内容紹介] 亜鉛は植物の必須微量元素の一つで、酵素や遺伝情報の発現に関与するタンパクの立体構造の維持、細胞分裂などに重要な役割を果たします。イネの場合、吸収された亜鉛は一旦節に蓄積し、メリステム、新葉や穂などの発達段階の組織に優先的に分配されますが、関与する輸送体は未同定でした。今回、我々は亜鉛輸送体として知られるOsZIP3が節で高発現し、亜鉛分配に関与することを突き止めました。OsZIP3タンパク質は、肥大維管束の木部柔組織特に木部転送細胞に局在していました。OsZIP3の発現を抑制すると、地上部、根の亜鉛濃度は野生型イネと比べ、大きな差は見られませんでしたが、発現抑制株の基部節の亜鉛濃度は野生株と比較して著しく減少していました。また、亜鉛安定同位元素を用いて、短期間の亜鉛分配を比較した結果、発現抑制株では下位葉に亜鉛がより多く分配されることが分かりました。さらに、地上部の伸長領域、導管液の亜鉛濃度を測定した結果、野生株と比較して発現抑制株は伸長領域の亜鉛濃度が減少し、導管液では増加していました。以上の結果より、OsZIP3は、根から吸収された亜鉛を基部節において肥大維管束の導管から回収して、発達段階の組織へと繋ぐ分散維管束への維管束間輸送に必要な輸送体であると考えられます。

(文責 植物ストレス学グループ・馬 建鋒)

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