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ウイルス感染に対抗するRNAサイレンシング鍵酵素DCLの機能特異性を解説

[著者] Ida Bagus Andika, Kazuyuki Maruyama, Liying Sun, Hideki Kondo, Tetsuo Tamada,  Nobuhiro Suzuki

[論文タイトル] Different Dicer-like protein components required for intracellular and systemic antiviral silencing in Arabidopsis thaliana

[掲載論文] Plant Signaling & Behavior 10 (8), e1039214-1 (2015)

[内容紹介]
RNAサイレンシングは、植物の遺伝子発現制御やウイルスなどの外来核酸への防御に関与します。RNAサイレンシングの鍵酵素であるDicer-like protein (DCL)は低分子二本鎖RNAを産生しますが、モデル植物のシロイヌナズナでは4種のDCL(DCL1-4)が知られています。植物ウイルスは多くの作物で発生し問題となりますが、これらウイルスは最初に感染した細胞または器官で増殖し、細胞間移行を伴いながら徐々に感染領域を広げます。その後、維管束系へと侵入して長距離移行し、植物体全身へと感染が拡大していきます。したがって、植物のRNAサイレンシング防御機構は、局所および全身のレベルでウイルス感染に対抗する必要があります。私たちの先の成果(Andika et al., 2015)により、シロイヌナズナでは、DCL4がウイルスの局所感染に、DCL2がその全身移行の阻害に関与することを示唆しました。本論文では、ウイルスに対抗するDCLタンパク質のこのような機能特異性やDCL間での冗長性について議論いたしました。一連の成果は、植物の抗ウイルス機構の一端を紐解くものであり、ウイルスに対する抵抗性作物の開発上で重要な知見になると期待されます。

(文 責:近藤秀樹)

お問い合わせ先:植物・微生物相互作用グループ

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