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イネのウイルスが昆虫ウイルスから進化した

[著者] Pu, Y., Kikuchi, A., Moriyasu, Y., Tomaru, M., Jin, Y., Suga, H., Hagiwara, K., Akita, F., Shimizu, T., Netsu, O., Suzuki, N., Uehara-Ichiki, T.,

[タイトル] Rice dwarf viruses with dysfunctional genomes generated in plants are filtered out in vector insects -implications for the virus origin.

[掲載誌] J. Virol(2011). 85, 2975?2979. doi:10.1128/JVI.02147-10

[共同研究] 農研センター・大村博士との共同研究


[内容紹介]  イネ萎縮ウイルスは動物界(ヨコバイ、媒介昆虫)と植物界(イネ)の両方に宿主を持ちます。そのゲノムは12本の分節2本鎖RNA(S1-S12)からな ります。この研究では、それぞれの宿主で長期間継代したウイルスの集団遺伝学的解析を行い、RDVの起源を考察しました。イネのみで継代すると S2,S10にフレームシフト、ナンセンス変異等による欠損変異が時間と経過とともに蓄積し、6年間継代したウイルスは昆虫培養細胞での増殖能も、媒介さ れる能力も消失しました。一方、ヨコバイ培養細胞で継代した場合は、欠損変異は認められませんでした。これらの結果を裏付けるように、S2, S10にコードされる蛋白質(P2、Pns10)は、6年間イネで維持したRDVでは検出されず、昆虫細胞で継代したRDVでは検出されました。興味深い ことに、イネで3年あるいは5年間継代したウイルスをヨコバイ細胞、個体で増殖させると、欠損ウイルスから野生型ウイルスへの優占集団の速やかな変化が認 められました。また、昆虫細胞で長期間継代したウイルスはイネへの感染能を失うことはありませんでした。RDV P2、Pns10は植物宿主では不要であるが昆虫宿主では必須であること、そしてそれらをコードするS2, S10は異なる宿主で異なる選択圧を受けていると考えられました。これらの結果は、RDVの先祖ウイルスが昆虫ウイルス由来で、進化の過程で植物への感染 能を獲得したと推察されます。RDVがイネでは種子伝染できない上、昆虫宿主では高率に継卵伝染するという事実もこの仮説を支持します(文責:植物・微生 物相互作用グループ 鈴木)。

 

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▶ 植物・微生物相互作用グループ

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