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ゲノム編集技術を応用して植物組織内でDNA配列を可視化する方法を開発しました

[著者] Kiyotaka Nagaki and Naoki Yamaji

[論文タイトル] Decrosslinking enables visualization of RNA-guided endonuclease–in situ labeling signals for DNA sequences in plant tissues.

[掲載論文] J. Exp. Bot. 71(6): 1792-1800 (2020)
https://academic.oup.com/jxb/article/71/6/1792/5648097?searchresult=1

[内容紹介]
植物の根や葉など器官は、形状や機能は異なりますが同じゲノムDNAをもっています。植物の細胞は、環境の変化に対応して、個別に遺伝子をオン/オフ(遺伝子発現制御)することで、機能調節をおこなっています。遺伝子発現は、DNAやヒストンなどに“目印”として、化学的変化(エピジェネティック修飾)が起きることによってオン/オフされています。エピジェネティック修飾を解析する一般的な方法は、細胞をすり潰したり、バラバラにする必要があるため、これらの方法ではエピジェネティック修飾の組織内位置情報を知ることはできませんでした。この情報は、個々の細胞が受けている異なる遺伝子制御や組織内ネットワークを探る上で、不可欠な情報です。私たちは、2017年に植物組織内でエピジェネティック修飾を可視化する方法を開発しましたが、この方法では動原体など特異的なタンパク質が局在する部位でのみ個別部位のエピジェネティック状態が解析可能でした。ゲノム内の任意の座位のエピジェネティック状態を知るために、植物組織にダメージを与えずに標的DNA配列を可視化する方法が必要とされていました。
 そこで、本研究ではゲノム編集で用いられるCas9タンパク質と蛍光標識したガイドRNAを用いたDNA配列可視化法であるRGEN-ISL (CRISPR-FISH)法を用いた植物組織内標的DNA配列可視化法を開発しました。先に報告されたRGEN-ISL法は、固定に対してセンシティブで、組織を十分に固定するとシグナルを得ることができず、シグナルを得るために弱い固定を用いると切片作成時に組織が崩壊してしまいました。私たちは、この問題を固定後に切片を作成し、その切片を脱固定後にRGEN-ISL法を行うことにより克服し、組織切片内で標的DNA配列を可視化できる様にしました。この方法は、多くの植物種で利用可能であり、この方法がさまざまな植物の遺伝子発現制御ネットワークの解析やDNA配列の局在解析に利用されることが期待されます。

(文責 統合ゲノム育種・長岐 清孝(この研究は兼任の作物イノベーション研究チーム・エピジェネティクス班の研究としておこなわれました))

関連リンク: 統合ゲノム育種グループ

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