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研究内容

1. ウイルスの細胞間移行とウイルス・宿主の相互作用
植物細胞はその一つ一つが細胞壁に囲まれているため、隣り合う細胞は細胞壁に隔てられています。隣の細胞と何らかのシグナル伝達を行うためには、植物は『原形質連絡』という構造を用いることが知られています。原形質連絡は、細胞壁にあいた微小な穴を貫くチャネル構造で、この構造は細胞膜に裏打ちされており、細胞質とERがその内側を貫いています。言葉を変えれば、原形質連絡によって、隣り合う細胞同士は細胞の内部構造を共有する形になっており、ひとつの細胞内で生産された生体高分子が細胞外に分泌されることなく隣の細胞に直接取り込まれるわけです。植物ウイルスは、この原形質連絡をのっとる形で細胞から細胞へと移動します。この移動の過程で、ウイルスの『移動因子』が重要な役割を果たします。移動因子は、ウイルスゲノムを細胞質から細胞壁に存在する原形質連絡まで輸送し、原形質連絡の口径を広げ、原形質連絡をすり抜ける形でウイルスゲノムを隣の細胞に運ぶという機能を果たしているわけです。この過程の中でも、移動因子がどのようにして原形質連絡の口径を広げているのか、が大きな謎として残っているのですが、この解明のためには移動因子がどのような宿主の因子に結合・作用するのかを見出す必要があります。

Fig1. Cadmium-induced glycine rich protein(cdiGRP) は、維管束に蓄積するタンパク質で、大量に発現するとカロースの蓄積を誘導して、タバコモザイクウイルスの移動を阻害します。この写真は、 (A)コントロール条件(B)cdiGRP発現を誘導してウイルス移動阻害作用がある低濃度カドミウムで処理したタバコの維管束(C) cdiGRPを強制発現したタバコの維管束をアニリンブルーによって処理し、カロース蓄積量を可視化したものです(Nat Cell Biol (2002) 4: 478-486)。


Fig2. cdiGRP-interacting protein (GrIP)はcdiGRPに結合して安定化することで、原形質連絡周辺のカロース蓄積量を増加させます。この写真はcdiGRPのタンパク質(青いシグナル)量が、野生型(A, B)にくらべてGrIP強制発現型(C,D)で、特に低濃度カドミウムで処理した場合(B,D)で、コントロール(A,C)に比べてcdiGRPのタンパク質(青いシグナル)量が増加していることを示しています。GrIPとcdiGRPは協同的にカロース蓄積量をコントロールし、ウイルスの移動を抑制する因子といえます(PNAS(2005) 102: 12089-12094)。

Fig3. Ankyrin repeat containing protein (ANK)はタバコモザイクウイルスの移動因子(TMV MP)に直接結合して、その原形質連絡を介した移動を促進します。TMV MPは原形質連絡に局在しますが(A)、ANKは細胞質全体に分布するタンパク質です(B).ただし、二つのたんぱく質の結合を可視化することができるBiFC (Bimolecular fluorescent complementation assay)をもちいると、この二つのタンパク質の間の結合(C,D)は、原形質連絡の局在マーカーであるPDCBというタンパク質(E)と重なることがわかります。つまり、ANKとTMV MPの結合は原形質連絡に限局して起こっていることがわかります。

2. 赤潮原因藻ヘテロシグマとそのウイルスの関係についての分子生物学的研究
赤潮は、いくつかの海洋プランクトンが大発生して高い密度で海水中に集合することでみられる現象です。この赤潮原因藻の急激な増加は栄養条件・日照時間・水温などの条件が重なることによっておこります。赤潮は、沿岸海域で夏季に急激に発生しますが、この消失もほとんど一夜にしておこります。この、急激な赤潮原因藻の死滅に、実はウイルスの感染が深くかかわっていることが明らかになってきました。Heterosigma akashiwo (Ha)は赤潮の大部分をなす単細胞藻で、Heterosigma akashiwo virus (HaV)はHaに感染して殺藻します。これまで、HaとHaVの研究は生態学的観点から進められており、これらの研究からさらなる興味深い疑問が浮かび上がってきました。例えば、なぜ、HaVの感染は、Haの海水中密度がある程度増えてから起こるのでしょうか?また、冬季には、海水中のHaの細胞数は非常に低く抑えられているのですが、これらは春になって水温が上がるまで生存しています。その間、Haを殺害してしまうHaV はどこに隠れているのでしょうか?これら生態系ですでにその重要性が確認されているHaHaV間の生物学的綱引きについて、細胞分子生物学の観点から詳しく研究を進めていこうと考えています。

Fig4. Heterosigma akashiwoのウイルス感染による溶藻の様子。左から、ウイルス感染がないヘテロシグマ、ウイルスを感染させて24時間たったもの、48時間たったものを示しています。ヘテロシグマが多く生息する人工海水は、「赤潮」の名にふさわしく褐色をしています。また、ヘテロシグマは鞭毛をもっており海水中を泳ぎ回っています。しかし、ウイルスが感染すると、ヘテロシグマは自泳能を失い、沈殿し(中央)、更に感染が進行すると死滅します(右)。

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